「禁止事項の羅列」は使われない

生成AIの社内ガイドラインを作ったが、誰も読んでいない。あるいは、禁止が多すぎて現場が使うのをやめた。こうした声をよく聞きます。ガイドラインの目的はリスクをゼロにすることではなく、「ここまでは安心して使ってよい」という範囲を示し、社員が迷わずに使える状態を作ることです。

基本方針は1枚に収める

本文は A4 で1枚(約1,500字)を目安にします。読まれることが最優先です。詳細な手順やツール固有の設定は付録に分けます。

記載すべき8項目

# 項目 書く内容
1 目的 会社としてAIを活用する理由と、ガイドラインの位置づけ
2 対象 対象者(全社員・業務委託など)と対象ツール(会社が契約したもの)
3 使ってよい業務 文書作成、要約、集計、コードの補助など。具体的に列挙する
4 入力してはいけない情報 個人情報、顧客の機密、未公表の財務情報、認証情報など
5 出力の確認義務 数値・固有名詞・法的表現・引用は必ず人が確認する。社外提出物の責任は作成者にある
6 知的財産と開示 著作物の扱い、生成物の権利、社外への AI 利用の開示方針
7 AIエージェントの追加ルール ファイル操作・実行を伴うツールでの作業範囲、権限設定、取り消せない操作の禁止
8 相談窓口と改定 困ったときの窓口、インシデント時の報告先、見直しの周期

AIエージェント特有の項目

Claude Code や Codex のように、ファイルを読み書きし、コマンドを実行するツールでは、チャット型AIの前提だけでは足りません。次を追加します。

  • 作業範囲の限定:指定した作業フォルダの外を操作しない
  • 権限設定の標準:導入初期は確認を求めるモードを標準にし、自動許可の範囲は情シスが定める
  • 取り消せない操作の禁止:削除、外部送信、本番環境への変更は人が実行する
  • 指示書の整備:CLAUDE.md / AGENTS.md に禁止事項を明記する

権限設計の詳細は Claude Code を安全に社内利用するための権限・セキュリティ設計、Copilot 固有の論点は Copilot のガバナンス設計 を参照してください。

書き方の3原則

  1. 「してよいこと」から書く:禁止事項より先に、推奨する使い方を示す
  2. 判断できる基準にする:「適切に」ではなく、「顧客名を含むファイルは入力しない」のように判断できる表現にする
  3. 例を添える:良い例・悪い例を1つずつ添えると、解釈のぶれが減る

改定の運用

  • 暫定版で始める:完成を待たず、パイロット部署向けの暫定版を出し、運用しながら直す
  • 改定の周期:四半期に1回。ツールの機能更新と社内の事例を反映する
  • 改定の記録:版番号と変更点を残し、周知する

テンプレート(骨子)

生成AI・AIエージェント利用ガイドライン(第1版)

1. 目的
2. 対象者・対象ツール
3. 推奨する使い方(業務例)
4. 入力してはいけない情報
5. 出力の確認と責任
6. 知的財産・開示
7. AIエージェント利用時の追加ルール
8. 相談窓口・インシデント報告・改定

付録A:Microsoft 365 Copilot の利用ルール
付録B:Claude Code / Codex の権限設定と指示書テンプレート

研修・コンサルティングで自社版を作る

当社の研修では、経営層・情シス向けのプログラムの中で、自社版ガイドラインのたたき台を作成します。全社的な方針から整えたい場合は、DX/AXコンサルティング でロードマップと合わせて策定します。無料相談 からご相談ください。

よくある質問

ガイドラインは法務が作るべきですか?
法務・情シス・業務部門の三者で作るのが理想です。法務だけで作ると禁止事項中心になり現場で使われず、業務部門だけで作るとリスクの確認が抜けます。推進担当が起案し、法務・情シスがレビューする流れが現実的です。
ツールごとにガイドラインを分けるべきですか?
全社共通の基本方針を1枚にまとめ、ツール固有のルール(Copilot の感度ラベル、Claude Code の権限設定など)は付録として分けると、改定しやすく読まれやすくなります。