今回の事例で獲得した成果

  • 「分からないことは『不明』と書く」と手順書に明記し、1校ごとに検証スクリプトを通してから次へ進む運用で、58校・146プログラム・46項目を同じ形式の比較データにできました。 空欄を推測で埋めさせないことを、エージェントへの指示の最優先に置きました。
  • 一部の大学の公式サイトは自動取得を受け付けず(アクセス拒否・ボット対策・JavaScript による描画)、Webアーカイブなどで補ったものが出ました。 どこから取得した情報かを、プログラムごと・出典ごとに記録する欄が必要でした。
  • 検索の利用枠が上限に達し、国内の調査は23社で止まりました。 調査の網羅性は、検索・取得の利用枠に左右されます。
  • 調査対象は2026年に新設されたものが多く、6〜12か月で内容が古くなります。 同じ出力形式とスクリプトで、年1回やり直せる形にしておくことが前提になります。

取り組んだ課題

アリストルは、経営者・管理職向けのAI教育プログラムを設計するにあたり、世界の経営者教育(エグゼクティブ教育)がAI、特にAIエージェントをどこまで扱っているかを把握する必要がありました。

各プログラムが何を教え、演習で何を扱っているかを比べるには、各校の公式情報に当たる必要があります。ただし対象は数十校・百件以上あり、人が一校ずつ読んで表にまとめるには手間がかかります。そこで、公式サイトの記載だけを根拠に、比較できる形のデータをAIエージェントに作らせることにしました。

実施内容の概要

人とAIの役割

担当 役割
アリストル 調査の目的と、答えるべき10の問いを設定。結果を解釈し、自社のAI教育プログラムの設計に反映
手順書(調査開始前に用意) 出力項目(46項目)、判定基準、厳守事項(捏造の禁止、読めない場合の扱い、1校ごとの書き出しと検証)を定義
AIエージェント 担当グループ(A〜F)ごとに各校の公式サイトを検索・読解し、1校1ファイルの構造化データに書き出す。公式ページが読めない場合は代替の取得方法を使い、その旨を記録
スクリプト 構造化データの形式チェック、一覧データ(CSV)の生成、集計、出典一覧の生成

利用環境

  • AIエージェント:Claude Code(Web検索・Webページ取得の機能を使用)
  • 補助:Python のスクリプト(検証・集計・閲覧用HTMLとPDFの生成)、Webアーカイブ経由でページを取得するスクリプト
  • 入力:各校・各社が公開しているWebページと公式資料のみ。社内データや顧客データは扱っていません。

変更した工程

人が行うと時間のかかる「検索して読み、表に転記し、出典を整理する」作業のうち、検索・読解・転記・出典整理をエージェントとスクリプトに任せました。人が担うのは、問いの設定と、結果の解釈です。

結果と検証条件

項目 内容
対象 世界のビジネススクール58校・146プログラム(46項目)、国内の提供者23社・27件
成果物 一覧データ(CSV)、検索・絞り込みができる閲覧用HTML、文書10本(結論・分析・プログラム設計)、全体を収録したPDF
実施時期 2026年9月21日〜22日(成果物の作成記録による)
検証の方法 1校ごとに検証スクリプトで形式・必須項目を確認してから次の校へ進む。情報源の質(公式ページ/公式PDF/検索結果の抜粋のみ/混在)をプログラムごとに記録し、出典URLを残す。Webアーカイブ経由の出典はその旨を注記
人による確認・修正の時間 計測していません
初期準備(手順書・スクリプト作成)の工数 計測していません
内容の誤り率 計測していません。出典URLから後で確認できる形にしています

この結果は当社の1回の調査の記録です。同じ方法で、同じ範囲・品質・所要時間が得られることを示すものではありません。

なお、同じ進め方で、先に世界200社のAI活用を公開資料から整理したデータベース(根拠となる記述1,273件)も作成しています。

うまくいかなかったこと・適用上の限界

  • 自動取得を受け付けない公式サイトがありました。 Webアーカイブや提携先の公式掲載で補い、出典にその旨を注記しています。
  • 検索の利用枠が上限に達し、国内の調査は23社に留まりました。 調査できていない提供者が残っています。
  • 「AIエージェントをどこまで扱っているか」の段階判定には、記載内容の解釈が入ります。 単語が出てくるだけでは段階を上げず、迷う場合は低く付ける規則にしましたが、判定のぶれを完全になくすものではありません。
  • 調査対象の変化が速く、6〜12か月で内容が古くなります。 一度作って終わりにはできません。
  • 公開情報の調査です。 社内データや顧客データを扱う業務に、そのまま当てはまるものではありません。

他の企業で検討する際のポイント

  • 「分からないことは『不明』と書く」ことを指示に明記し、空欄を推測で埋めさせない。
  • 1件ごとに書き出して機械的に検証してから次へ進む。途中で止まっても、それまでの成果が残る。
  • どこから取得した情報かを記録し、後から人が出典をたどって確認できるようにする。
  • 検索・取得の利用枠や、取得を受け付けないサイトがあることを前提に、調査範囲を決める。
  • 定期的に更新する調査なら、同じ出力形式で再実行できる形にしておく。
  • 社内データや顧客データを扱う業務に広げる場合は、利用できるAI環境とデータの取り扱いを先に確認する。