今回の事例で獲得した成果
- アクセス、フォーム送信、メールでの問い合わせを「上流から下流への流れ」として並べると、どこで数字が止まっているかを先に示せました。 「アクセスは増えたのに問い合わせが増えていない」といった差があれば、AIが指摘する手順にしています。
- AIが先に「データ上こう動いたが、理由が分からないもの」を番号付きで一覧にし、担当者にその心当たりを聞く順番にしました。 数字の動きの説明を推測で埋めさせず、説明がつかないものは「要因不明」のまま残します。
- レポートの「先週行った施策」と「今週の予定」は、担当者の回答だけで作ります。 AIが施策を創作しないこと、施策と結果の対応づけには根拠となる数字を添えることを、手順書で決めています。
- 問い合わせの中身は件数・種別・対応状況までに留め、個人情報はレポートに転記しない形で作成できました。 各ツールの認証情報も毎回担当者に確認し、ファイルに保存しない扱いにしています。
- 実施はまだ1回ずつです。 週次振り返りは1回、同じ型を経営会議の準備に当てはめた経営ブリーフィングも1回の記録で、継続した場合の使い勝手や効果は確認できていません。
取り組んだ課題
アリストルが運営するWebサービス事業の1つでは、サイトのアクセスはGA4、問い合わせはメール、資料請求などのフォーム送信はHubSpot、開発・保守の課題はBacklog、と数字が別々のツールにあります。週に1回これらを集めて前週と比べ、さらに先週行った施策が数字にどう出たかまで対応づけるには、複数の画面を行き来する集計作業が必要です。
そこで、集計と前週比の算出、気になる動きの抽出をエージェントに任せ、担当者は施策の説明と、次に何をするかの判断に集中できるようにしました。数字を眺めるだけで終わらせず、施策(打ち手)と結果(データの動き)を対応づけて記録することを目的にしています。
実施内容の概要
人とAIの役割
| 担当 | 役割 |
|---|---|
| 事業の担当者 | 各ツールの認証情報をその都度用意する。先週行った施策、数字の動きへの心当たり、今週の予定を答える |
| AIエージェント | 4つのデータを先週・先々週の2期間分集計し、前週比、特異点の一覧、リードの流れ、課題の進捗をまとめる。問いを1つずつ投げ、回答とデータを突き合わせてHTMLのレポートにする |
| スクリプト | GA4のデータをAPIで取得し、サマリ指標・日別推移・チャネル別・上位ページ・上位ランディングページをファイルに保存する |
利用環境
- AIエージェント:Claude Code(スキル)。月曜の朝に手動で起動する設計です。
- データ:GA4(Data API、読み取り専用の権限)、Backlog(API)、問い合わせ用アドレスあてのメール(連携済みのGmailを検索)、HubSpot(フォームごとの送信件数)
- 操作:すべて読み取りのみ。各ツールへの書き込みや変更、メールの返信は行いません。
- 出力:単一のHTMLファイル(外部のファイルやフォントを読み込まない)
変更した工程
人だけで行う場合は、各ツールの画面を開いて数字を書き写し、前週と比べ、気づいたことをまとめる、という流れになります。エージェントを使う流れは次のとおりです。
- 認証情報の確認とデータ収集:各ツールの認証情報を担当者に確認し(ログや設定ファイルからは探さない)、先週(月〜日)と先々週の2期間分を取得する
- 定量分析:前週比、特異点(特定の日の急増・急減、チャネルの急変、上位ページの入れ替わり、問い合わせの急増・急減や未返信の残留)、リードの流れ(アクセス → フォーム送信 → メールでの問い合わせ)、課題の進捗(完了・新規・停滞)をまとめる
- テキストのサマリ:3行サマリ、アクセスの数字、問い合わせ・リード、課題の進捗、特異点の一覧をチャットで示す
- 対話(1問ずつ、回答を待つ):①先週行った施策、②特異点の背景、③今週の予定施策を聞く。施策で説明がつきそうな動きは、AIが仮説として示す(断定はしない)
- レポートの出力:前週比付きのKPIカード、アクセスの詳細、問い合わせ・リード、課題の進捗、先週行った施策、施策と結果の突き合わせ、今後に向けた示唆(続ける/やめる/試す)、今週の予定施策の順でHTMLにまとめる
課題管理の集計では、期限を過ぎたまま大量に残っている特定の保守要望の塊を別枠に分け、件数の集計から除外しています。集計のノイズになるためです。
同じ型を経営会議の準備に当てはめた例
経営会議の前に、売上・費用・投資の数字、全社員のカレンダーから見える進捗、前週の決定事項のフォローを集め、経営者へのヒアリング(数字の確認、会社の具体的な課題、方針とのズレとリスク、今回決めるべきこと)を経て、会議資料と次週用のメモを出す「経営ブリーフィング」も作りました。財務データはクラウド会計ソフトと連携できない場合は代替のスプレッドシートから読み、取れない数字は推測せずヒアリングで確認します。全社員のカレンダーは会社全体の進捗を見るために使い、休暇の理由などの個人的な情報は出力せず、個人の負荷ランキングは作らないと決めています。
結果と検証条件
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | Webサービス事業の週次振り返り(対象週:2026年7月6日〜12日)、経営ブリーフィング(2026年8月24日) |
| 実施回数 | 各1回(出力ファイルの記録による) |
| 成果物 | 週次振り返りのHTMLレポート。経営会議用のHTMLレポートと次週用のメモ |
| 人の関与 | 施策・予定はすべて担当者の回答から作成。数字の動きの解釈はAIが根拠の数字を添えて示し、説明がつかないものは「要因不明」と書く。取得できなかった項目は推測値で埋めず「取得不可」と書く |
| 集計作業の時間 | 計測していません |
| 初期構築の工数 | 計測していません |
| 施策の効果 | 評価していません。突き合わせは数字の動きと施策を並べたもので、因果関係を示すものではありません |
この結果は当社の取り組みの記録です。同じ方法で同じ結果が得られることを示すものではありません。
うまくいかなかったこと・適用上の限界
- 継続運用の記録がありません。 週次振り返り・経営ブリーフィングとも1回の実施で、毎週続けたときの使い勝手や、前週比を積み重ねたときの見え方は確認できていません。
- 認証情報を毎回用意する手間があります。 安全のため保存も探索もしない取り決めにしたので、起動のたびに担当者が認証情報を用意する必要があります。
- ツールごとに取得上の制約があります。 GA4は一部の指標が使えないプロパティがあり、その指標を外して取り直す処理を入れています。Backlogは1回に取得できる件数に上限があり、期限に関する課題は別に取得しないと期限超過分で埋まります。メールの検索は条件によって件数が不自然に少なく出ることがあり、別の条件でも検索します。
- 施策と結果の対応づけは解釈です。 同じ週に複数の施策や外部要因が重なると、どれが効いたかは切り分けられません。
- 社内のツール構成に合わせて作っています。 対象のフォームや課題管理のプロジェクトを手順書に書いているため、他の事業にそのまま使えるものではありません。
他の企業で検討する際のポイント
- 数字を集めるだけで終わらせず、「施策を聞いて、結果と並べる」ところまでを1つの流れにする。
- 理由が分からない動きはAIに一覧にさせ、説明は人に聞く。推測で埋めさせない。
- 施策や予定はAIに作らせず、担当者の回答だけから作る。
- 問い合わせ内容などの個人情報は、件数・種別・対応状況までに留めて転記しない。
- 認証情報は保存・探索させず、各ツールの権限は読み取りのみにする。
- 集計のノイズになると分かっているデータ(古い課題の塊など)を、手順書で別枠として定義しておく。
- 効果を確かめたい場合は、導入前の集計時間を記録しておく。
